福井県出身のシンガー 田中裕梨
透明感のある声で、カバー曲の原曲の良さが伝わってくる。
このアルバムいいよ、
ここからは福井経済新聞より
田中さんは1981(昭和56)年、福井県永平寺町生まれ。仁愛女子高(福井市宝永4)音楽科卒業後、福井市内にあるクラブでのライブ活動などを経て上京。2007年からアーバンジャズグループ「Blu-Swing(ブルー・スウィング)」に参加し、CDリリースや海外公演など精力的な活動を行っている。2013年の伊勢神宮(三重県伊勢市)式年遷宮では「白石献上歌」の歌い手としても関わった。
約15年間の音楽活動で初となるソロアルバムは、自身のルーツという1970~80年代の日本のシティーポップスがテーマ。候補曲から「悩みに悩んだ」結果、「真夜中のドア」(松原みきさん)、「マイ・ピュア・レディー」(尾崎亜美さん)、「ミッドナイト・ラブ・コール」(石川セリさん)、「雨音はショパンの調べ」(小林麻美さん)、「みずいろの雨」(八神純子さん)など10曲に絞り込んだ。
田中さんは「ジャズやクラブミュージックをやりたいという思いで上京したのを機に、10年ほど前からシティーポップスを深く聴くようになった。日本語の美しさや柔らかな音色は邦楽でもあり洋楽でもあるよう。当時は『生音一発録(ど)り』のようなレコーディングも多く、人力で音楽を作り上げたエネルギーが楽曲にあふれている。Blu-Swingのサウンドにもつながる私の方向性を決めてくれた存在」と振り返る。
アルバムのプランは2年ほど前からあり「折を見て録りためていった」というが、作業が本格的に始まったのは昨年9月ごろ。「原曲を愛しているリスナーさんが多いということを頭に置き、皆さんの気持ちを裏切らないよう歌い方の物まねから始めた」。楽曲の世界を多面的に理解しようと、原曲が生まれた時代背景をウェブで調べる作業も行った。
福井市出身で、同グループキーボーディストの中村祐介さんがプロデュースと全楽曲のアレンジを担当した。演奏機材の一つに、音楽ファンの間で「赤いシンセ」と呼ばれるスウェーデン「クラビア」社のバーチャル・アナログ・シンセサイザー「Nord(ノード)」を使い、「原曲の持つ音の温かみを生かしつつ、アップツーデートな雰囲気を感じられるよう工夫した」という。
「一つ一つの楽曲を解きほぐす作業がすごく楽しかった。例えば大貫妙子さんの『都会』という曲はもともと坂本龍一さんの編曲で、クラシック音楽の和声理論が取り入れられているというような発見ができた。アルバム制作で音楽の基礎を学び直せたのは貴重な体験だった」とも。原曲の持つエネルギーを再現できればと、レコーディングも2~3テーク程度の「ほぼ一発録り」で収めた。
SNSでは若い世代のリスナーから「昔の名曲と言われても一曲も知らないが、新しい曲としてスッと耳に入ってくる」などの反響があったという。「昔の名曲というと洋楽が思い浮かぶかもしれないが、歌謡曲など日本のポップスシーンにも美しい曲は数多い。今回のアルバムがシティーポップスの再評価につながるきっかけとなれば」と田中さん。同グループでの活動とリンクさせ、海外での日本語ポップス普及にも意欲をのぞかせる。
価格は2,484円。全国のCDショップなどで取り扱う。